『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ
こんにちは、ユーカリです。
5歳児ハナと夫と、地方都市でたのしく暮らしています。
突然ですが、私は作家の姫野カオルコが20代の頃から好き。
私にとって純粋、潔癖、知性の象徴たる、大切な作家です。
というわけで、2018年7月末に出た新刊『彼女は頭が悪いから』も発売前から楽しみにしていました。
その時点で内容は全然知らなかったため、タイトルから勝手に『ひと呼んでミツコ』のような、勧善懲悪のコメディかと思っていました。
つまり『彼女は頭が悪いから』と断罪しているのは正義の側だと単純に思っていた。
Amazonの内容紹介は以下のとおりです。
私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの?
深夜のマンションで起こった東大生5人による強制わいせつ事件。非難されたのはなぜか被害者の女子大生だった。
現実に起こった事件に着想を得た衝撃の書き下ろし「非さわやか100%青春小説」!
横浜市郊外のごくふつうの家庭で育った神立美咲は女子大に進学する。渋谷区広尾の申し分のない環境で育った竹内つばさは、東京大学理科1類に進学した。横浜のオクフェスの夜、ふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはずだった。しかし、人々の妬み、劣等感、格差意識が交錯し、東大生5人によるおぞましい事件につながってゆく。
被害者の美咲がなぜ、「前途ある東大生より、バカ大学のおまえが逮捕されたほうが日本に有益」「この女、被害者がじゃなくて、自称被害者です。尻軽の勘違い女です」とまで、ネットで叩かれなければならなかったのか。
「わいせつ事件」の背景に隠された、学歴格差、スクールカースト、男女のコンプレックス、理系VS文系……。内なる日本人の差別意識をえぐり、とことん切なくて胸が苦しくなる「事実を越えた真実」。すべての東大関係者と、東大生や東大OBOGによって嫌な思いをした人々に。娘や息子を悲惨な事件から守りたいすべての保護者に。スクールカーストに苦しんだことがある人に。恋人ができなくて悩む女性と男性に。
この作品は彼女と彼らの物語であると同時に、私たちの物語です。
購入するとき、内容紹介を読みまして、数日迷った後に買いました。
数日後に旅に出掛ける予定だったので、そのお供となる本を探していたのですよ。
実際に旅の間じゅうKindleで読んでいて、旅は楽しかったんだけど、ずっと浮かない顔をしていたので夫にも娘にも申し訳なかったと思う。
重い本です。でも読み終わるまで止められなかった。
お涙頂戴の物語にしようと思えばいくらでもできるモチーフです。
そうしない繊細さが姫野カオルコたるゆえんだと思いました。
書き方に誠意はあるけど情緒たっぷりではありません。描写は冷徹ですらあると思った。
だからこそ受け手である私たちは胸をえぐられたような思いをするし、もし自分だったら…と真剣に考えざるを得ない。大人&女児の母として「あの最悪な夜を避けられる方法はなかっただろうか」と読みながら何度もシミュレーションする。でも固有名詞を含む膨大な描写の積み重ねがそれを阻む。
最後まで読んでも分かりやすいカタルシスは得られない。
本当に『非さわやか100%青春小説』です。
さわやかな青春を過ごす人ってどのくらいいるんでしょうね。
少なくとも私の青春も非さわやかだったな。ということも思い出しました。
娘の教育について「傷つかないように武器を授けている」という自覚も生まれました。
すごく人に勧めにくい本です。
でも、この本を読んで何らかの思いを持った人は信頼に値すると思う。
お読みいただきありがとうございました。